
Inventorの新バージョンとなる、Inventor 2027 がリリースされました。この記事ではInventor 2027の概要とAutodesk Assistantテクニカル プレビューについてご紹介をいたします。
Inventor 2027のAutodesk Assistantでは、設計データと自然言語でやり取りする新しいインターフェースを提供します。
これによりInventor 2027では、設計データに対して“直接質問する”という新しいインタラクションが可能になり、従来の操作中心のワークフローから大きな変化が生まれつつあります。
本記事では、その具体的な仕組みと活用方法を見ていきます。
Inventor 2027 リリース
システム要件
サポートされるプラットフォームは、Windows 11 の 64 ビット版となります。
詳細なシステム要件については、オンラインドキュメントの「System requirements for Autodesk Inventor 2027」以下のページをご参照ください。
アドインの互換性
Inventor 2027は、2026以前の.NET 8から.NET 10へ移行をしております。
Inventor 2024以前のInventor SDKを用いた.NET Framework 4.8 ベースのアドインプロジェクトは.NET 10 へアップグレードして再ビルド。
Inventor 2025、2026の.NET 8ベースのアドインプロジェクトは.NET 10 をターゲットにして再ビルドする必要があります。
.NET Framework 4.8から.NETへの移植についてはInventor 2026のオンラインのAPIリファレンス「Port .Net Framework-based project to .Net」に移植手順が記載されておりますのでご参照ください
図面の互換性
これまでのInventorのリリースと同様に、Inventorファイルの保存形式が変更されており、Inventor 2027で作成したファイルをInventor 2026で開こうとすると、以下のようなダイアログが表示されます。

ダイアログに記載のように、Inventor 2027で作成、保存したファイルを、Inventor 2026で開くためには、Inventor Interoperability 2027 コンポーネントの適用が必要となります。ダイアログでインストールボタンを押下するとコンポーネントがインストールされ、Inventor 2026でも開くことが出来るようになります。
Inventorのファイル互換性に関するトラブルシューティングについては、オンラインヘルプの「トラブル シューティング: 新しい Inventor ファイルを開く」をご参照ください。
Inventor SDKと開発者向けツール
Inventorのアドインプログラム等を開発するためのSDKのインストーラについては、Inventorのインストーラに含まれており、通常C:\Users\Public\Documents\Autodesk\Inventor 2027\SDK フォルダ配下に配置されます。
SDKフォルダ配下には、「SDK_Readme.htm」、「developertools.msi」、「usertools.msi」が含まれており、「developertools.msi」をインストールすることで、C:\Users\Public\Documents\Autodesk\Inventor 2027\SDK\DeveloperToolsフォルダ配下に、Inventorのオブジェクトモデルドキュメント、各種サンプルプログラムやツール等がインストールされます。
なお、Inventor add-inを開発する際に使用する、Visual StudioのアドインWizardについては、DeveloperTools.msiをインストールすることで併せてインストールされます。VB.net やC#等の.Net言語を用いてInventor 2027のアドインを開発する場合、Inventor の.NET 10対応に伴い.NET 10のアセンブリをビルドすることが可能なVisual Studio 2026が開発環境として必要となります点にご留意ください。
開発環境の詳細については英語となりますが、SDKフォルダ内の「SDK_Readme.htm」をご参照ください。
Autodesk Assistant テクニカルプレビュー
昨年の Autodesk University(AU)で披露された、Autodesk Assistant を活用したエアフライヤーのデモは記憶に新しいのではないでしょうか。設計データに対して自然言語で指示を与え、情報取得や操作を行うその体験は、従来のCAD操作の在り方を大きく変える可能性を示していました。
そして今回、Inventor 2027 では、この Autodesk Assistant が テクニカルプレビューとして利用可能 になりました。
その基本的な仕組みと、実際にどのような価値をもたらすのかを見ていきます。
Autodesk Assistant の起動方法
まずは利用方法です。
Inventor 2027 では、Autodesk Assistant は独立したツールではなく、アドインとして提供されています。
- [ツール] タブ → [アドイン マネージャ] を開く
- Autodesk Assistant に関連するアドインがロードされていることを確認

アドインを有効化(※インストール後のデフォルトでは有効化済み)することで、Assistantの機能が利用可能になります。
Autodesk Assistantは、
– ツールバーの「ヘルプ」アイコン → 「Autodesk Assistant」
– またはツールバー上の専用アイコン(?アイコンの右隣り)

から起動することができます。
起動すると、Autodesk Assistantはサイドパネルとして表示され、ここから自然言語で操作や問い合わせが可能です

MCPサーバとモデルコンテキスト
アドインのインストールディレクトリを確認すると、Inventor向けのMCP(Model Context Protocol)サーバが含まれていることが分かります。

これにより、Autodesk Assistantは現在の設計データに直接アクセスしながら応答します。
そのため、一般的なAIのような説明ではなく、実際のアセンブリ構造やiPropertyに基づいた具体的な結果を返すことができます。
すなわち、Autodesk Assistant は単なるチャットUI機能ではなく
- アセンブリ構造
- プロパティ情報
- コンポーネント間の関係
といった設計データそのものに対して直接アクセスできる仕組みが用意されていることが分かります。
つまり、Autodesk Assistantは一般的なAIのように外部からテキストで応答する存在ではなく、
- 現在開いているアセンブリ構造を理解し
- 各コンポーネントの iProperty にアクセスし
- Inventorの機能と連携して結果を返す
といった形で、設計データと一体化して動作する存在です。
この「設計データへの直接アクセス」こそが、ChatGPTなどの一般的なAIの使い方との大きな違いです。
一般的なAIがテキスト情報をもとに回答するのに対し、Autodesk Assistantは現在の設計データを参照しながら応答します。
そのため、
- 実際のアセンブリ構造
- 各コンポーネントの属性情報(iProperty)
- 現在の設計状態
といった“その場のデータ”に基づいた、より具体的な結果を返すことが可能になっています。
つまり、Autodesk Assistantは単に回答するだけでなく、設計データを前提にした応答が可能になっています。
まずできること:アセンブリ情報の取得
この仕組みによって、まず基本となるのが、アセンブリ構造やiPropertyといったモデル情報の取得です。
例えば次のような依頼:
「アセンブリ内のコンポーネント一覧を階層構造付きで取得し、各コンポーネントの重量と体積も合わせて教えて」
Assistantは、
- アセンブリ構造を解析し
- 各コンポーネントの iProperty を取得し
- 階層情報付きで整理して出力
します。
従来であれば、
- iLogic
- VBA
- アドイン開発
といったカスタム実装が必要だった処理です。
ここで重要なのは、「情報を見に行く」のではなく、“聞けば返ってくる”体験に変わっている点です。
情報取得から一歩進む:設計レビューへの応用
そして、これらの情報取得機能をベースに、さらに実務的な価値として有効なのが設計レビューへの応用です。
例えば:
「材質が未設定、または密度が0の部品を一覧化して」
従来であれば、
- iPropertyを個別に確認
- ルールをiLogicで実装
といった手間が必要でした。
Autodesk Assistantを使うことで、こうした条件付きのチェックも自然言語で一度に実行できます。
これは単なる検索ではなく、
👉 設計データに対して“問いを投げる”ことで品質を検証できる
という新しいワークフローです。
設計レビューが「後工程」から「対話的に行うプロセス」へと変わる可能性を感じさせます。
「Inventorならでは」の活用プロンプト例
※以下の例は、Autodesk Assistantの活用イメージを示すプロンプトです。
現時点のテクニカルプレビューでは、すべての操作が実行されるわけではなく手順のガイドに留まる場合があります。
構造理解
- 「このアセンブリの構成をツリーで説明して」
情報取得
- 「すべてのコンポーネントの重量と体積を一覧で教えて」
分析
- 「重量が大きいコンポーネント上位5つを教えて」
設計品質チェック
- 「材質が未設定の部品を一覧化して」
- 「体積が極端に小さい部品を抽出して」
これらはすべて、モデルを“操作する前に理解する”ための対話と言えます。
従来のワークフローでは、
- モデルを開いて
- ブラウザを確認し
- プロパティを個別にチェックし
- 必要に応じて操作や修正を行う
といったように、「まず操作して状況を把握する」流れが一般的でした。
一方でAutodesk Assistantを使う場合は、
- 「このアセンブリの構成を教えて」
- 「問題がありそうな部品を抽出して」
といった形で、操作に入る前にモデルの状態を把握することができます。
つまり、
- モデルを触りながら理解するのではなく
- 対話を通じて理解してから操作に入る
という流れに変わります。
この違いにより、特に大規模アセンブリや初見のデータに対して、
- 状況把握の時間短縮
- 見落としの防止
といった効果が期待できます。
現時点の制限と今後への期待
現時点ではテクニカルプレビューという位置づけのため、Autodesk Assistantは主に情報取得・分析・ナビゲーション支援に強みを持っています。
例えば、
- 「構成を教えて」
- 「重量の大きい部品を抽出して」
- 「不備のある部品を一覧化して」
といった問いには、実データに基づいて応答します。
一方で、
- 「フィレットを追加して」
- 「スケッチを作成して押し出しして」
- 「この寸法を変更して」
といったモデル編集操作については、現時点では
- 操作手順の提示
- コマンドのガイド
に留まり、実際の自動実行には至っていません。
つまり現在のAssistantは、
“スケッチやフィーチャーを直接作成・編集するAI”ではなく、“設計データの理解と判断を支援するAI”
という段階にあります。
しかし、すでに
- アセンブリ構造やiPropertyといった設計データへのアクセス
- Inventor機能との接続基盤
は整っており、これは次の段階を強く示唆しています。
例えば今後は:
- 「このエッジにフィレットを追加して」
- 「この部品を軽量化する案を提案して」
- 「この部品群の材質を変更して再計算して」
といった、意図から操作までを一貫して実行する体験へと進化していく可能性があります。
まとめ
Inventor 2027 における Autodesk Assistant のテクニカルプレビューは、
- アセンブリ構造やiPropertyといった設計データへの自然言語アクセス
- 情報取得の即時化
- 設計レビューの対話化
を実現し、設計プロセスに新しいインタラクションをもたらしています。
これは単なる情報取得を超え、設計品質をその場で検証できる点が大きな価値です。
現時点ではまだ発展途上ではあるものの、その基盤を見る限り、
“操作するCAD”から“対話するCAD”へ
という変化の入口に立っていると言えるでしょう。
設計データに対して“聞く”という行為が、これからのCAD操作の新しい基本になっていくのかもしれません。
今後の進化にぜひご期待ください。
次回以降の記事では、Inventor 2027での機能拡張についてご案内をしていきます。
by Takehiro Kato

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