
Autodesk Inventor 2027 がリリースされました。
本バージョンでは、設計効率の向上、自動化の強化、相互運用性の改善といった観点で、多くの機能改善が行われています。特に今回は、日常的な設計作業の中で自然に効いてくるようなアップデートが多い点が特徴です。
なお、 Inventor 2027でテクニカルプレビュー版のAutodesk Assistantが利用できるようになっています。
Autodesk Assistantについては「Inventor 2027リリースとAutodesk Assistantテクニカル プレビュー」で紹介しています。AIアシスタントを活用した新しいCADの使い方を体験できる点が特徴です。従来の操作方法とは異なるアプローチとして、設計業務の効率化や自動化の可能性を感じられる内容となっていますので、ぜひあわせてご参照ください。
本記事では、それ以外の新機能を中心に整理します。
今回のアップデートの方向性
Inventor 2027 のアップデートは、以下の3つの方向に整理できます。
- モデリングと図面の一貫性の強化
- 自動化の裾野の拡大
- 既存ワークフローの効率改善
以下では、主要な機能をいくつかピックアップしながら紹介します。
パーツモデリング:スロット機能の追加
Inventor 2027 では、スロット専用のコマンドが追加されています。プロパティパネルから寸法や形状を定義でき、穴コマンドに近い操作でスロットを作成できます。
従来はスケッチと押し出しの組み合わせで表現していた形状を、単一のフィーチャーとして扱えるようになったことで、設計履歴の可読性が向上しています。また、既存の穴からスロットへ変換できるため、設計変更にも柔軟に対応できます。
例えば、後工程で長穴が必要になった場合でも、モデルを作り直すことなく変更できるため、設計変更のコスト削減につながります。

また、スロットは図面の穴テーブルやセンターマークとも連携しており、モデルから図面まで同一の意味を持つデータとして扱える点も重要です。
APIの観点では、これまでスケッチベースで扱われることが多かったスロット形状が、Inventor 2027 では専用コマンドとして明示的なフィーチャーとして定義されました( Placed Feature Enhancements)。
このスロットはブラウザノードとして管理され、穴からの変換やパラメータ定義が可能であるほか、図面においても穴テーブルやセンターマークと統合されています( Drawing Style Enhancements)。
これにより、単なるスケッチ形状ではなく意味を持ったフィーチャーとして扱えるようになり、形状認識や属性取得の扱いがシンプルになることが期待されます。
アセンブリ:再利用性と設計意図の強化
コンテンツセンターの拡張
アセンブリをコンテンツセンターのユーザーライブラリに公開できるようになりました。
これにより、単体部品だけでなく、サブアセンブリ単位での再利用が可能になります。例えば、よく使うユニットや標準構成を登録しておくことで、設計の立ち上げ時間を短縮できます。
テンプレートの置き換えにも対応しているため、企業標準の変更にも対応しやすくなっています。
APIの観点では、今回の変更によりアセンブリ単位での再利用が UI 上で可能になった点は興味深く、今後の自動化の粒度を考えるうえで重要な変化と言えます。
現時点で公開されている API リファレンスでは、Content Center からアセンブリを直接挿入する専用 API は明確ではありませんが、アセンブリ実体を既存ファイルとして扱える場合には、通常のサブアセンブリ配置 API を利用した自動化への展開が考えられます。
コンポーネントパターンの強化
スケッチラインを使用して、パターン方向や軸を定義できるようになりました。
スケッチベースでパターンを制御できるため、設計変更時にも配置を維持しやすくなります。形状変更が頻繁に発生する設計において特に有効です。
図面:モデルとの一貫性向上
スロット機能の導入に伴い、図面機能も強化されています。寸法スタイル、穴テーブル、センターマークなどでスロットを扱えるようになりました。
これにより、モデリング時に定義した情報がそのまま図面に反映され、手作業による注釈作成を減らすことができます。
図面作成時の作業削減だけでなく、情報の不整合を防ぐという意味でも効果の大きい改善です。
iLogic:自動化の敷居を下げる Codeblocks
iLogic にコードブロックエディタが追加されました。ブロックを組み合わせることで、視覚的にルールを作成できます。
従来のテキストベースの記述に加え、条件分岐や繰り返し処理をブロックとして構築できるため、プログラミングに慣れていないユーザーでも自動化に取り組みやすくなっています。
例えば、パラメータに応じて部品構成を切り替えるようなルールを、視覚的に組み立てることができます。
APIの観点では、Codeblocks は新たな自動化機能というよりも、iLogic の表現方法を拡張する位置付けと考えるのが適切です。従来のテキストベースの iLogic に比べて、条件分岐や処理の流れを視覚的に表現できるため、プログラミングに不慣れなユーザーにとっては扱いやすくなっています。
一方で、既にコードベースで iLogic や API を扱っているユーザーにとっては、記述の自由度や効率の面で従来のテキスト記述の方が適している場面も多く、用途に応じた使い分けが前提となります。
また、Inventor 2027 では Autodesk Assistant による自然言語ベースの操作も導入されており、検索や一時的な操作といったクエリ系の処理については Assistant が担う領域が広がっています。そのため、iLogic / Codeblocks は「モデルに組み込む設計ルール」や「再利用可能な自動化処理」を担う位置付けがより明確になってきていると考えられます。
これらの関係性や役割分担については、別記事で整理していきたいと思います。
プラットフォーム:パフォーマンスと操作性
DirectX 12 に対応し、GPUを活用した描画性能の向上が期待されます。
大規模アセンブリや高密度モデルを扱う場面では、表示性能の改善が体感しやすいポイントになります。
また、ファイル検索やツリービューの改善など、日常操作に関わる部分の見直しも行われています。
相互運用性:点群とデータ連携
点群の配置では、UCSを基準とした位置合わせが可能になり、実測データとの整合が取りやすくなっています。
点群は既存の断面ビュー(Section View)コマンドに対応しており、断面位置に応じて点群の内部を可視化することができます。
PCF エクスポートでは、座標精度の調整やマテリアル情報の出力が強化されています。これにより、出力データの精度向上や材料情報の一貫性確保が可能になっています。
まとめ
Inventor 2027 は、プレビュー版Autodesk Assistant の導入という大きな変化も含まれていますが、その他の機能については、日常業務に直結する改善が積み重ねられたリリースとなっています。
特に、スロット機能、iLogic Codeblocks、コンテンツセンターの拡張は、設計プロセスに直接影響するポイントです。
実際の業務に適用しながら確認していくことで、今回のアップデートの価値を実感しやすいと思います。
by Takehiro Kato

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