クラウド、あるいはクラウド コンピューティングという言葉は、最近では一般的になってきたと思います。今回から 3 回に分けて、オートデスクのクラウド サービスである Autodesk 360 について紹介をしてみたいと思います。
もともと、CADソフトウェアの世界では、ネットワークに接続されていないコンピュータ上に、購入した CAD ソフトをインストールして利用する形態が主流でした。その後、コンピュータをネットワークに接続して、図面ファイルなどのデータを複数の設計者が共有するような クライアント-サーバー形態の運用に移行してきました。その間、コンピュータ ハードウェアや CAD ソフトウェアの能力が飛躍的に向上してきたのですが、CAD の機能の中に、コンピュータに長時間の計算を強いるような「重たい」機能が徐々に実装されるようになってきています。そんな背景とともに登場したのが Autodesk 360 です。
Autodesk 360 は、インターネットに接続されたパブリックで強力なコンピュータ リソースを利用する、オートデスクのクラウド サービスの総称、あるいは、ブランド名で、複数の異なるサービスで構成されています。

AutoCAD 360 をお使いいただく利点として、次の4点を挙げることができます。これらを念頭に、これからご紹介する機能を理解していただければ、よりクラウドの利点を把握できるものと思います。
1. いつでも、どこからでも図面・設計図書にアクセス
クラウドにデータを保存することでデータ中心の設計環境を実現
2. スマートフォン、タブレットなどのモバイル デバイスの活用が可能
印刷出力した紙図面の持ち出しが不要、あるいは 大幅低減
3. 複数の設計者間で図面の共有やオンライン コラボレーションを実現
明示的に指定したメンバでクラウド上の図面を同時に閲覧、協調編集
4. クラウド リソースを集中利用してデスクトップPCを演算負荷から解放
高負荷なレンダリングや解析演算をクラウドに代替させて手元の作業を継続
それでは、代表的なサービスを具体的に紹介していきましょう。なお、ここで紹介しないサービスには、BIM 360、CIM 360、SIM 360、PLM 360 に含まれる複数のサービスが存在する点にご注意ください。これらについては、別の機会にご紹介することにします。
Autodesk 360
オートデスクのクラウド サービス ブランド名でも利用される名称ですが、複数あるサービスの中で基本的なストレージ サービスとデータファイルの表示機能を提供します。つまり、設計にかかわる各種データ ファイルは、いつでも Autodesk 360 にアップロードして、別の場所から閲覧したり、ダウンロードすることができます。
Autodesk 360 へのアクセスには、Autodesk ID と呼ばれるアカウントの作成が必要です。アカウントの作成は、http://accounts.autodesk.com/ や http://360.autodesk.com の[アカウントの作成] リンクから、どなたでも無償でおこなっていただくことが可能です。アカウント作成が完了すると、http://360.autodesk.com や 2013 シリーズのオートデスク デスクトップ製品から Autodesk 360 にサインイン出来るようになります。Autodesk ID は、Autodesk 360 の各種サービスで共通して利用いただけます。
提供されるストレージ領域は 3GB(ギガバイト)です。もし、オートデスク製品をお使いで、サブスクリプション契約をされているお客様には、次の FAQ にある「Subscription ユーザの方」の手続きをしていただくことで、25GB の領域がアカウント毎に提供されます。
QA-6580 Autodesk 360 サービスへのアクセス方法について
http://tech.autodesk.jp/faq/faq/adsk_result_dd.asp?QA_ID=6580
ストレージ領域は、アカウント毎に他のユーザから隠蔽されているので、アップロードしたファイルが別のユーザに勝手に盗み見られたり、ダウンロードされるようなことはありません。クラウドとクライアント コンピュータ間の通信には、暗号化された SSL 通信が採用されています。
その他、Autodesk ID や Autodesk 360 などについての よくある質問は、Autodesk Technical Q&A から、製品名に「Autodesk 360」を指定していただくことで、さまざまな技術的な情報を得ることができます。
クライアント コンピュータから Web ブラウザを使ってファイルをアップロードしたり、他のユーザと共有する手順は、下記の動画で把握していただけます(音声はありません)。
Autodesk 360 へは、Web ブラウザやオートデスクのデスクトップ製品からのアクセスの他に、Android 端末、iOS 端末(iPhone、iPad)用に無償提供されるモバイル アプリケーションからアクセスすることもできます。モバイル アプリケーションは、Android アプリは こちら から、iOS アプリは こちら からそれぞれ入手できます。なお、Android アプリは、2013年2月現在、ユーザインタフェースが英語のみの提供になっています。

Autodesk 360 の表示機能は、もともと DWF ファイルのみでしたが、最近ではアップロードした PDF ファイルを表示できるように改良されています。また、オートデスクのデスクトップ製品は、製品毎に異なるファイル形式を採用していますが、アップロードしたファイルを背後で自動的に DWF に変換する機能により、2D、3D を問わず、さまざまなファイルを表示できるようになっています。変換処理には時間がかかる場合がありますので、即座に参照したい場合には、デスクトップ製品から DWF ファイルを出力して、アップロードすることをお勧めします。2013年2月時点で表示できるのは、次のファイルです。
・Autodesk .dwf ファイル
・AutoCAD .dwg ファイル
・Inventor .idw、.ipt、.iam ファイル
* Inventor 2013 の「保存して Cloud に送信」機能の使用が必要
・Adobe .pdf ファイル
・Revit .rvt ファイル
・Navisworks .nwd ファイル
・Inventor Fusion for Mac .f3d ファイル
・Showcase HTML Web ムービー
* Showcase 2013 の「プレゼンテーションを公開」機能の使用が必要
このような機能の他にも、オートデスクのデスクトップ製品を利用するとで、クラウドならではのユニークな機能を享受することができまるようになります。たとえば、AutoCAD 2013 や AutoCAD LT 2013 を使うと、カスタマイズした定義ファイル(除く API カスタマイズ ファイル)や環境をクラウドに保存して、他の環境のAutoCADに同期することが可能です。出張先の AutoCAD を、使い易くカスタマイズしたいつもの AutoCAD と同じように使いたい、といった要望に応える機能と言えます。
ここで紹介した機能は、アカウントさえ登録してしまえば、誰でも無償で利用できる点が重要です。
次回は、AutoCAD WS を紹介する予定です。
By Toshiaki Isezaki

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